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新着情報

VICアカデミーを実施しました

2020年 07月 09日

VICアカデミーとは、弊社理念にある「学習と成長」の実践の一つとして開催している
VIC社員及び関係者のための勉強会です。

日にち:2020年6月17日
テーマ:「弁護士の仕事と企業法務の判例」
講師:西川法律事務所 弁護士 西川 将史 氏

今回は、弁護士の西川 将史 氏をお招きし、法律に関わる基礎知識や、
普段なかなか知ることのない弁護士の仕事についてお話しいただきました。

■弁護士の仕事
取扱業務は法律に関する業務全般。
裁判手続き(訴訟、調停等)、法的助言(法律相談、企業顧問等)を行います。
専門に特化しているところはまだ少数派ではあるものの、弁護士人口の増加とともに組織化・専門化が進んでいます。日本には1万5000以上の法律事務所があり、その多くは弁護士数3名以下ですが、近年は都市部を中心に大規模な弁護士事務所が増えています。
【隣接士業との業務の違い】
・司法書士:登記の専門家
・社会保険労務士(社労士):労働・社会保険、年金の専門家
・弁理士:知的財産の専門家
・行政書士:書類作成の専門家(官公庁等に提出する書類の作成・提出手続)
・税理士:税金の専門家
・公認会計士:監査・会計の専門家
弁護士は上記の公認会計士以外の仕事を行うことができます。

【隣接士業との役割分担例】
1.司法書士の例: 司法書士事務所にて140万円以下の民事事件(たとえば過払い金の請求など)の相談・交渉・和解・訴訟代理を対応、140万円を超える場合は、弁護士に引き継ぐ(その際、紹介料の授受があると、弁護士職務基本規程に違反する)。
2.社労士の例:従業員の労務管理について、平時は社労士が対応、労働問題に発展した場合は弁護士が対応する。

■ 弁護士・検察官・裁判官(法曹三者)への道
大学→法科大学院(ロースクール)※
→司法試験→司法修習(1年間)→修了試験→弁護士・検察官・裁判官
法曹人口の増加、質の高い法律家の養成を目的に、2004年ロースクールが開校されました。
※予備試験に合格するとロースクールを経ずに司法試験の受験が可能になります

■非弁行為
弁護士以外の者が、報酬を得る目的で,法的な紛争に関して,他人と交渉をしたり,法律相談に応じることを業とすることはできません(弁護士法第72、73条)。
違反すると,同法77条により、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金という重い罰則があります。

近年、これらの弁護士法に触れるおそれのある業態が増えているため、注意が必要です。
たとえば退職代行業者ですが、メッセージを伝えるだけの機能であれば問題ありませんが、支払われていない残業代について掛け合うなど、法律上の権利・義務に関わることを弁護士でない人が行うと刑事罰が課されるおそれがあります。

■三権分立について
国民の意思を反映できるはずの民主主義も完ぺきというわけではありません。歴史的にはナチス・ドイツに見るように、時に暴走し、多数派が少数派の権利を侵害するに至ることもあります。そこで、国会は「立法権」を、内閣は「行政権」を、裁判所は「司法権」を担当し、互いに抑制し合い、均衡を保つことで権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障する三権分立の考え方を日本国憲法も取り入れています。

たとえば、裁判官の報酬と職権は、憲法によって守られており、懲戒処分を行政機関が行うことはできません(憲法第78?80条)が、これも三権分立の考え方に基づいています。裁判官が公正な裁判を行うために、特定の政治的、社会的な勢力などからのコントロールが及ばないように考えられています。

検察庁法改正案の成立による黒川前検事長の定年延長に世論が大きく反発したのは、司法に対して行政が力を及ぼすことへの大きな懸念の現れでしょう。

■民事手続と刑事手続
【民事手続(民事訴訟)】
個人(法人も含む)間の紛争を解決するための手続き。
当事者は原則として個人もしくは法人であり、適用される法律は、民法・商法などの私法。
*手続きの流れ*
起訴提起(訴状を裁判所に提出する)→弁論期日→証人尋問・当事者尋問→弁論終結→判決言渡し→起訴→上告

【刑事手続(刑事訴訟)】
犯罪行為を行ったかどうか、刑罰を科すべきかどうか等について判断するための手続き。
起訴ができるのは検察官のみで、当事者は検察官と被告人となる。
適用される法律は、刑法、覚せい剤取締法、大麻取締法、銃刀法など。
*手続きの流れ*
捜査の開始→逮捕→勾留(起訴前勾留)→起訴または不起訴→勾留(起訴後勾留)→裁判→判決→起訴・上告

■よくある疑問について
*逮捕について*
逮捕は刑罰ではありません。罪を犯したことを疑うに足る相当な理由と、逃亡又は証拠隠滅のおそれ、この両方があると裁判官が判断した場合に、逮捕状を発行します。行政機関である捜査機関が自らの判断のみで行使ができないようになっています。

2019年に池袋で車が暴走し、通行人をはねた事件で、87歳の被疑者が逮捕されなかったことについて、上級国民だからではないか、といった疑問の声があがりましたが、この件に関しては、優遇されたというわけではなく、被疑者と捜査の状況から、逃亡又は証拠隠滅のおそれがないと判断された、と考えられます。

*「被告」と「被告人」の違い*
・「被告」とは、民事事件で訴えられた人のこと。
・「被告人」とは、刑事事件で起訴された人のこと。
(「被疑者」は犯罪の嫌疑を受けて捜査の対象となっているが、まだ起訴されていない者)

*「弁護士」と「弁護人」の違い*
・「弁護士」は資格や職業名。
・「弁護人」は刑事事件において被疑者や被告人の弁護を行う人のこと。
「弁護士がだれそれの弁護人になる」という言い方になる。

■その他
1.SNSにて匿名の人から誹謗中傷を受けた場合、身元を特定し起訴が可能か(受講者質問より)
発信者特定手続きが必要ですが、それには多くの時間と費用を要するため、昨今のSNS関連の事件等により、手続きの簡略化が検討されています。

2.良い弁護士の探し方
企業における顧問弁護士は、企業法務からの紹介で担当することが多いです。
(一般的な費用としては月3時間程度の稼働で5万円ほどが相場)
その企業や個人にあった良い弁護士を探すには、多少お金をかけても、直接弁護士に会っていくつかの問題について、実際に話を聞いてみることをお勧めします。
国が設立した法テラス(日本司法支援センター)では、相談者の経済的な状況に応じて無料相談や費用の立替などに応じる制度があります。
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日々ニュースで耳にし、なんとなく知ってはいるものの、正確には知らない用語の数々。誰もがいつ巻き込まれてもおかしくないテーマ。集中力が途切れることなく、全員が最後まで真剣に聞き入っていました。世の中の仕組みが成り立つ経緯や背景について、少しでも深く情報を取りに行くことが大切だと、あらためて感じました。