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VICアカデミーを開催しました

2020年 11月 24日

VICアカデミーとは、弊社理念にある「学習と成長」の実践の一つとして開催している
VIC社員及び関係者のための勉強会です。
今回は読売日本交響楽団チェリストの渡辺玄一氏をお招きし、
「リーダーシップと自己研鑽(音楽家の視点から)」をテーマにお話いただきました。

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   日にち: 2020年11月11日(水)
   テーマ :「リーダーシップと自己研鑽(音楽家の視点から)」
   講 師 : 読売日本交響楽団 チェリスト 渡辺 玄一氏
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■オーケストラという組織
オーケストラはスポーツでいうとシンクロナイズドスイミングのようなものでチームワークが欠かせない。
ただ、意外かもしれないが、個人の仲の良し悪しが音楽に影響を及ぼすことはない。
有名なスメタナ弦楽四重奏団(チェコ)を例にとると、演奏時以外は顔を合わせたくないから
宿泊を伴う公演があれば別々のホテルに滞在するほど徹底していたが、演奏会では世界最高峰の音楽を奏でる。
彼らの目的は「いい音楽を奏でること」。
目的に対して深い自覚を持っていれば、仲の良し悪しが成果に影響することはない。
奏者たちには、各々が積み重ねてきた相当な苦労と努力があり、互いに敬意を持っている。
また、音楽芸術に身をおく自負心が根底にあり、単なる集団ではなく、共有できる大切なものが
あるからこそ、一つの音楽を奏でることができる。

■指揮者とリーダーシップ
自分が良い仕事(演奏)をしている、オーケストラ全体がいい音を奏でている、
と思わせてくれる指揮者に共通するものは「感動を伝える力」。
「感動」とは人生において重要であり、「どれだけ感動したかでその人の人生の値打ちが変わる」といっても
過言ではないほど、人を動かす大きな力を持っている。
巨匠といわれる指揮者たちは、豊富な知識と経験を持ち、自ら感動する力を積み重ねている。
そういう人が指揮台に立った時は皆が無私になり自然と従う。
逆に人間としての基礎ができていなければ、人に感動を与えることはできない。
音楽よりも自分の尊厳を気にするような指揮者はすぐに見抜かれてしまう。
この人といると感動できる、と思えるリーダーに人は自発的についていくもので、
これはオーケストラに限らず、他の仕事であっても同じことが言えるだろう。

■音楽家としての自己研鑽
楽器をやっていると、どうしてやり続けられるのかと聞かれることもある。
自分がチェロ始めたのは遅かったうえに天才ではない。しかも一度ドロップアウトした経験もある。
再開した時は周りとの差に愕然とし、ただがむしゃらなだけでは天才と呼ばれる人たちに敵うわけがないと知った。
そんな自分がなぜプロになれたのか、一つだけ心当たりがある。
「毎日、例外なく続ける日課」だ。
「日課」だけは、必ず自分を新しい段階に連れてってくれることを実感した。

■クラシック音楽の楽しみ方
クラシック音楽は難しい、敷居が高いと思われがちだが、その楽曲が作られた背景や
作曲家たちの想い等を知ると、曲の感じ方も変わってくる。
今年はベートーヴェン生誕250周年。
苦労の多かったベートーヴェンだが、その才能は素晴らしく、若き天才と呼ばれていた。
彼は心の底から音楽が人類を救うと考え、「音楽で真実を表現する人間になる」という信念を
持っていたが、難聴に苦しみ、晩年はほぼ聞こえない状態だった。
困難を抱えた彼はハイリゲンシュタットに移り住み、弟宛に死にたいと思った経緯を手紙にした。
(ハイリゲンシュタットの遺書)
手紙は、最初こそ自分の苦しみ、みじめな状態をつづっていたが、そこから自分の決意や
弟を思いやるものに変化している。
この手紙が実際に弟に届くことはなく、彼の死後、机の中の隠しスペースから見つかった。
これだけ苦しんでいたのに、彼はこれを公表しなかった。
それどころか、この手紙を書いた後に名曲と呼ばれる傑作を次から次へと生み出している。
ベートーヴェンはとても高い志と強い精神力を持ち合わせた人物だった。
彼の音楽を聴く時は、そういう人が書いた音楽だということを思い出してほしい。


【渡辺玄一氏 プロフィール】

 東京芸術大学附属高校を経て、桐朋学園大学卒業。同校研究科卒業
 1993年米国ジュリアード音楽院卒業
 インディアナ大学で研鑽を積み1995年帰国
 以来、NHKテレビ出演をはじめ、ソリストとして、また室内楽、オーケストラ奏者として幅広く活躍
 2003年より文化庁海外派遣員として1年間ドイツのミュンヘンにて研修
 2008年(株)東京アンサンブルギルド設立
 現在、読売日本交響楽団団員