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VICアカデミーを開催しました

2021年 12月 18日

VICアカデミーは、弊社理念にある「学習と成長」の実践の一つとして開催しています。

今回は、公益財団法人 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会大会運営局にて、
「青海アーバンスポーツパーク」という会場の会場運営担当部長(Venue General Manager: VGM)として
活躍された東日本旅客鉄道株式会社 柳澤 美香様をお招きして、大会運営を振り返ってお話いただきました。


「TOKYO2020の組織運営から学んだこと」

■TOKYO2020大会
大会ビジョンは「スポーツには世界と未来を変える力がある」。
「全員が自己ベスト」「多様性と調和」「未来への継承」を基本コンセプトとして、史上最も
イノベーティブで世界にポジティブな改革をもたらす大会をめざした。一部の会場は1964年東京大会で
使用した施設も使用。
また子供たちの参画意識醸成のため公式キャラクターは全国の小学生(全国で205,755クラス)に選出して
もらい「ミライトワ」 と「ソメイティ」に決定した。

■青海アーバンスポーツパーク(Aomi Urban Sports Park:略称AUP)
オリンピック:
 3x3 バスケットボール(7/24-7/28)・スポーツクライミング(8/3-8/6) いずれもTokyo2020からの新競技
 スポーツクライミング(女子)では、野中生萌選手が銀メダル、野口啓代選手が銅メダルを獲得。
パラリンピック:
 5人制サッカー(ブラインドサッカー)(8/29-31、9/2・4)
 場所は東京ベイエリアにあり、通常時は駐車場である東京都の土地(東京ダイバーシティの隣)に
 競技施設や観客スタンド、諸室等を架設で設置。3競技とも全く異なる競技のため、短期間での
 大規模転換工事を行いながら進める。

■オリンピック・パラリンピックの運営の仕組み、組織とはどのようなものか
IOC:
 国際オリンピック委員会(International Olympic Committee)
 1894年に設立。各オリンピック大会を運営する各大会組織委員会の親組織。
 オリンピックの商標、映像などの著作権等 知的財産権を国際的に保有する唯一の団体。
 大会開催地決定も行う。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(通称:Tokyo2020組織委員会):
 公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)と東京都により設立。関係各社、団体、東京都、
 政府、経済界等々との協力のもとその中心となり、大会の準備及び運営に関する事業を行う
 8つの「室」、11の「局」の元、IOCから決められたカテゴリーで分けられた52の
 ファンクショナルエリア(FA)を設置し 具体的な計画を進める。
大会に関わる人達(ステークホルダー):
 選手及び各国オリンピック委員会、各国パラリンピック委員会
 国際競技連盟(IF)、マーケティングパートナー、オリンピック・パラリンピックファミリー及び要人
 オリンピック放送機構(OBS)及びライツホルダー・放送事業者、プレス、観客、スタッフ 

■各会場の計画策定と大会運営はどのような体制か、VGMの仕事とは何か



・ VGMは担当する会場で、VEMを中心に、リードチーム主導で各FAをまとめながら、会場の計画策定と
  運営実施を行う。
・ 計画策定、運営実施をするには、IOCや東京都、IF等関係者との細かな調整を重ねながら進める。
・ VGMは大会実施時の会場の運営全体(ソフト・ハードとも)の責任者となる。

■東京2020オリパラを振り返って
「人」が一番大事だと改めて感じた。
オリパラに限ったことではなく、どのような仕事であっても同様だが、特に大会組織委員会はいろいろな
役所や組織からの寄せ集めで成り立っているし、大会そのものにも多くの人が関わっている。
それぞれの人が経験も価値観も仕事のやりかたも、何もかもが全く違う。人は自分の経験に基づいて相手の
言っていることや状況を理解するので、同じ話でも人によって理解は異なる。とにかく相手とベースが同じに
なるまで、とことんコミュニケーションを取るようにした。

担当した青海アーバンスポーツパーク(略称AUP)では、バックグラウンドの異なる全員が同じゴールを
目指して協力して、自分の役割を果たせるように、分かりやすい3つの目標を掲げた。
1.新競技において、歴史上初めてのメダリストを確実に作る
  AUPで行われるオリンピック2競技(「3x3 バスケットボール」と「スポーツクライミング」)は
  Tokyo2020大会で初めて採用された競技。
  歴史上初となるメダリスト誕生に向け、自分のやるべきことを確実に実行し、やりきる。
2.転換工事を成功させる
  同じ会場で異なる3競技を実施するため、限られた時間内にて確実な転換工事を行う。
3.けが人を出さない
  「安全・安心」を徹底する。

AUPの名称にある「青海」。
ここから、AUPのチーム全体を青い大きな海を渡る一艘の船に例え「青海丸」と命名。
「船は一人で漕ぐのは難しくても、皆で一緒に漕げば、どんなことがあっても前に進むことができる。
だからみんなで力を合わせてがんばろう!」と常にチーム内での共通認識にしていた。
会場のメンバーから募ったチームスローガンも、この青海丸をベースにした。
「青海丸!All aboard toward success!」に決定。「成功に向かって、全員で出発進行!」
そんな意味をこのスローガンに込めた。そして、このスローガンを何かやる時のかけ声にして、
皆で声に出して言うようにした。最初は恥ずかしがっていたメンバーも次第に一体感を感じ始め、
自ら「やりましょう!」というほどになった。些細なことだと思われるかもしれないが、これを始めてから
皆の行動の変化は明白で、同じものを創り上げていく仲間意識が強まった。
相手をよく見て、よく話し、苦手な人ほど積極的にコミュニケーションをとり、各人の得手不得手を理解
したうえで組み合わせを考えてチームを作ったことで、それぞれのストレスも軽減され、全体がスムーズに
仕事を進めることができ、成功につながった。

自分を一番近いところでサポートしてくれる人(会場オペレーションマネジャー)とは情報や想いを
全て共有し、信頼関係をつくった。脇を固めてくれた信頼のおけるこの2人の協力があったからこそ、
大会運営はクリアできたと思っている。

日本人同士であっても相互理解に難しさを感じることが多かったが、外国人に至っては異文化を背負っていたり、
言語の壁もあり、コミュニケーションをとることが余計に難しかった。だからこそ、相手と相手の置かれている
状況をよく知ろうと努めた。苦手な相手であっても、面倒だと思っても、相手の欲求に対して、相手が
「何がしたいのか」「何を求めているのか」をとことん考え、先に実行している会場があれば直接見に行って
参考にしたり、納期や設備の相談等も、「できないこと」よりも「できること」を伝えることを大切にすると、
互いに理解度が高まり、良い仕事につながっていった。

仕事は一人でするものではなく、仲間と一緒にやるからこそ最高のアプトプットが形成される。
そのアウトプットを生み出すためには、一人ひとりの最高のパフォーマンスを結束させるだけではなく、
全員が心意気をもって、同じ目標に向かって、同じ想いをもって進むことが同じことが大切。

■結果、「人が一番大事」
今回に限らず、どの仕事を振り返っても、やはり「人が一番大事」に尽きる。
仕事は大変なものだが、やり切った後に一緒に関わった人たちが、「一緒にがんばって楽しかった」、
「幸せな時間だった」と感じてくれたら何よりもうれしい。
最高のアウトプットが生み出せる環境を作り提供することが自分に課せられたもので、
次の成長のステップへと繋がっていくと信じている。