バリューイノベーションは社員教育でお悩みの中堅・中小企業様の社員研修・社員育成をお手伝いする企業研修の会社です。

新着情報

VICアカデミーを開催しました

2022年 08月 31日

VICアカデミーとは、弊社理念にある「学習と成長」の実践の1つとして開催しているVIC社員及び関係者のための
勉強会です。

今回は公益財団法人モラロジー道徳教育財団 企業センター副センター長
藤井大拙様をお招きして「道徳と日本の道徳教育について」をお話していただきました。

藤井大拙(ふじいだいせつ)
1968年 富山市生まれ
1986年 私立麗澤高等学校卒業
1992年 富山大学経済学部卒業
1992年 財団法人モラロジー研究所入所
企業センターにて経営者教育・社員教育・経営相談業務に従事
出版部にて書籍・雑誌などの編集に従事し、後に事業統括
2001年 麗澤大学大学院国際経済研究科博士課程満期退学
2013年 出版部長
2017年 企業センター副センター長

その他の活動
麗澤大学(道徳経営論)客員講師
共訳『サービス・マーケティング原理』(白桃書房)
共著『流通総論』(同文館)等

■道徳とは
「徳」の道。愛や思いやりや勤勉のことで、キリスト教、仏教、儒教それぞれの徳目があるが、一般には家庭、学校、企業(社会)と広い範囲で行われる道徳の内容を学び、実践を促す教育のことで、狭義では学校での教育科目の1つとして行われる「道徳」を指す。また、道徳は社会規範と精神規範の2つから成り立っている。
・社会規範:社会で生きる上で大切な礼儀作法、マナー、公共心、親切心であり、社会的に集団組織で積みあげてきたものと歴史的に積みあげてきたものがある。社会集団の秩序と調和を保つため、安定した社会生活を営むために形成されてきたもの。
・精神規範:人生を歩むうえで必要となる勤勉、正直、忍耐、熱心などの「個人的生活上の役割」

■倫理と道徳の相違点
倫理は処方箋。薬の能書きで効能や効果、成分などが書かれている。道徳を構成する内容や原理を示すことに重点があるので学問として成り立ちやすい。一方、道徳は薬。内容や原理とともにそれらを実行する習慣や態度・意欲が内面的な規範として備わっていることを含め使われ、倫理で打ち出されたものをどのように実行するか、どう影響するかに重きを置いている。

■道徳の必要性
法律も道徳も社会規範の一部だが、法律は最低限のルールで、義務として要求されルールを破れば罰せられるが、道徳は義務として要求されず強制力はない。現在は条例などを含めると8000近くの法律があり、この30年近くですでに立法爆発が起きている。もし道徳が衰退し、なくなれば、法による規制に頼るしかなく、ますます法整備が進み、立法爆発でがんじがらめになる。このような中で成功と幸福の一致を考えると、地位や名誉、能力や技術を得る力はあっても、それを維持していく力=道徳が必要なのだと考えている。つまり、信用と信頼を得る源泉こそ道徳と考えている。

■戦前までの日本の道徳教育
貴族・官吏、後に武士階級において、あるべき姿を教育した。仏教・儒教の影響を大きく受け、その徳目(学ぶ項目)を善とした。
・貴族(徳目):文学的教養・芸術的教養・学習態度・子弟のしつけ・信仰の尊重・家族道徳
・武士(徳目):忠節・武勇・哀愁・親子の情・忠義・忠公
道徳は江戸時代には寺小屋で教育されたが、道徳は中国から来た「論語」や「孟子」の教えを根底にしていたため、衰退した国のものを教科書にするのはおかしいとなり、明治維新後しばらく断絶した。しかし、「修身」という日本独自の道徳を立てて昭和の戦前まで教育の根底に据えられた。

■戦後の「道徳」の教育現場への議論
1950年ごろ「修身科」の復活に向けた議論がされたが、戦前の修身教育こそが戦争を生み、お国のために命を落とすと結び付けられ国論は分裂した。昭和33年「道徳の時間」として設置されるも、日教組の大反対もあり頓挫した。当時の政府が力を入れて特別科目の道徳を設置を試みたが、教科書もなく形骸化されてしまい、ホームルームやテレビ視聴の時間にあてられてしまった。しかし、平成23年の大津市のいじめで中学生が自殺した事件が社会問題となり、安倍首相をはじめ文科省が動きいじめ防止法が成立し、平成30年に小学校、翌年に中学校で「道徳科」を設置し教科化された。
★教科化→文科省「学習指導要領」に教育内容が記載。検定「教科書」を設置し配布

■横の道徳・縦の道徳
横の道徳とは公共的な市民道徳であり、自分、家族、友人、地域、国へと拡がり、現在ではSDGSもそれにあたる。ボランティアや募金なども浸透し、国際社会にまでその意識は広まっている。 一方、縦の道徳とは伝統的な国民道徳だが、アレルギー反応が強い。その理由として、国のために命を犠牲にしたことに結び付けてきたことが原因となっており、現在では社会のために貢献したい若者はたくさんいるが、公に忠義を尽くすという考えにアレルギーが出てきてしまう状況である。例えば、組織として上長を尊重しなければいけないが、秩序を保つための縦の道徳心が失われてきており、強く押し付けるとハラスメントになってしまうことも一因となっている。自分たちにも親や祖先がいるという生命的連続性や、伝統や文化の歴史的連続性を否定するということをどう考えるのか、縦の道徳の断絶が大きな問題となっている。

■信用・信頼を獲得した長寿企業大国にっぽん
日本人は長く続くということに価値を置いていることもあり、100年200年続いている企業は、日本に集中している。
100年以上継続している企業の経営者が大切にしている「1文字」は、1位:信用・信頼の「信」 2位:誠実の「誠」3位:継承の「継」 4位:まごころの「心」 5位:真実の「真」である。
長寿企業は道徳的なことを続け、信用と信頼を獲得した企業が多い。
※帝国データバンク史料館・産業調査部「百年続く企業の条件」朝日新書)

■品性資本を重視する経営
「品性」は「徳」と呼ばれ、経営者の品性を中心に社員全員の品性が集まったものが「品性資本」である。品性資本とは「信用・信頼」のことであり無形の資産であるという考えである。 あなたとなら仕事をしましょう。この「なら」と言われるところに品性や徳があり、「挨拶をする」「悪口はいわない」「仲間外れにしない」「ありがとうを言う」「嘘はつかない」「約束は守る」という幼少のころに親や先生に教わった基本的なものが大切である。 また、利己心(自身の損得勘定、好き嫌い感情)から利他心(相手の安心、満足、喜び)に価値基準を転換していく必要がある。

■3つの品性 羅針盤・ご縁・器
1つ目の品性は羅針盤であり、船の舵である。人間は心と頭で意思決定をしており、基準や優先順位をどのようにきめたのか、そこに人間性が現れる。ビジネスが成功するか否かを方向付けるのは皆さんの心次第であり、それを評価するのはお客様である。どちらも人間力がないとしっかり方向づけられず評価されない。
2つ目はご縁。自分の品性と人間力は、どういう方々に囲まれているかで映し出されている。品性を高めていけば、ご縁も人間関係も変わっていき、良いご縁を結べる力が備わってくる。
3つ目は器。社長の器が会社や社員の器を決める。平等に降り注がれるチャンスは器の分量しか入らない。

■道経一体の人づくりの特徴
「人づくり」そのものが企業の目的
通常は売り上げや利益のために人材を育成するが、売り上げや利益は人づくりの条件であり過程であるとする。
トップに高い道徳性、品性を求める
人づくりとはトップ自身の品性づくりとし、その高い品性で社員を道徳的に感化し、トップと一心同体の分身を作る。
ステークホルダーも人づくりの対象
人づくりの対象は社員だけでなく、顧客、仕入れ先などのステークホルダーも対象とする。それは「環境が人を作る」からであり、良き環境を作るために必要なことである。